院試対策〜線形代数:線型空間編
用語
線型空間(ベクトル空間)
集合の元が以下の性質を満たす
(1-1) と の和を定義することができ、それもの元。( + )と書く。
(1-2) + = +
(1-3) ( + ) + = + ( + )
(1-4)任意の元について + = が成立する元が唯一存在。(ゼロベクトル)
また、それぞれの元に対して + = となる元が唯一存在。
-と書く。(2-1) 任意の複素数cについてcを定義でき、それはの元。 1 =
(2-2) c( + ) = c + c
(2-3) (a+b) = a + b
(2-4) (ab) = a(b )線形写像
をみたすT
T( + ) = T + T
T(c ) = c T単射
の相異なる2つの元 , の写像T ,T がどのような,についても異なること。
全射
の元のTによる写像全体を、T( )と書く。これを の部分空間という。
= T() であるとき、Tを から への全射という。逆像
= T であるとき、 を のTによる逆像という。
逆写像
から への写像が存在し、ST ,TSがそれぞれ の元 を 自身に、 の元 を 自身に写す写像であるとき、 SをTの逆写像という。
S = と書く。
Tが逆写像であるための必要十分条件はTが全単射(単射かつ全射)であることである。同型写像
線形結合
線型独立,線形従属
の時、であるとき、 は線型独立であるという。
逆に、の少なくとも一つが0でないとき、は線型従属であるという。有限次元(無限次元)ベクトル空間
線型空間 の任意のベクトルが、に属する有限個(n個)のベクトルの線型結合で表されるとき、を有限次元ベクトル空間(n次元ベクトル空間)という。
また、このnをの次元といい、dim = n と表す。n個の線形独立なベクトルを基底という。なお、n次元実ベクトル、複素ベクトルの集合をと書く。
有限次元でない時、無限次元ベクトル空間という。像
の元すべてについて、そのTによる写像全体がつくる集合。Im T = T()と書く。
核
{ , T}を満たす[tex: \boldsymbol{V} の集合。 ( ) = Ker Tと書く。
ImT とKerTはそれぞれの部分空間である。階数,退化次数
dim(ImT)を写像Tの階数といい、dim(KerT)をTの退化次数という。
dim( ) = n, dim( ) = mとすると、
0 ≤ dim(Im T) ≤ m, 0 ≤ dim(Ker T) ≤ nが成り立つ。
定理
定理1 同型の性質(1)
1)
2)
3) ,定理2 同型の性質(2)
でTをからへの同型写像とする。
1)
のベクトルが線形独立(従属)なら、 のベクトルT,T ,Tが線形独立(従属)
2)
ならば
3)
と はn=mのとき同型であり、n≠mのときは同型ではない。定理3 Im,Kerの性質
1)
2)
= dim(Im T) + dim (Ker T)3)
dim(Im T) = 対応する行列の階数4)
行列の階数と転置行列の階数は等しい。
5)
行列のの階数は、の線型独立な列ベクトルの数と等しい。
また、その行列の線型独立な行ベクトルの個数に等しい。定理4
(m,n)型の行列Aの階数がrであるとすると、行列Aの小行列式のうち値が0でないものの最大次数はr
定理5 基底の変換
ベクトル空間 の基底をからに変換するとき,
$$ \boldsymbol{x} = \sum_{i=1}^{n} x_i \boldsymbol{e_i} =(\boldsymbol{e_1},\boldsymbol{e_2},\cdots,\boldsymbol{e_n)} \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} $$
$$ = \sum_{i=1}^{n} x_i \boldsymbol{e_i} =(\boldsymbol{e_1}',\boldsymbol{e_2}',\cdots,\boldsymbol{e_n}') \begin{pmatrix} x_1 ' \\ x_2' \\ \vdots \\ x_n' \end{pmatrix} $$
とし、
$$
(\boldsymbol{e_1}',\boldsymbol{e_2}',\cdots,\boldsymbol{e_n}') =(\boldsymbol{e_1},\boldsymbol{e_2},\cdots,\boldsymbol{e_n)}
\begin{pmatrix}
p_{11} & p_{12} & \cdots & p_{1n} \\
p_{21} & p_{22} & \cdots & p_{2n} \\
\vdots & & \ddots & \vdots \\
p_{n1} & p_{n2} & \cdots & p_{nn}
\end{pmatrix}
$$
となるとき、 $$ \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \vdots \\ x_n \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} p_{11} & p_{12} & \cdots & p_{1n} \\ p_{21} & p_{22} & \cdots & p_{2n} \\ \vdots & & \ddots & \vdots \\ p_{n1} & p_{n2} & \cdots & p_{nn} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x_1 ' \\ x_2' \\ \vdots \\ x_n' \end{pmatrix} $$
となる。この行列を基底の変換行列という。
また、基底変換前の線形変換行列をとし、基底変換後の線形変換行列を とすると、
となる。